一昨日、あきちゃんの教え子がこの世を去った。
まだ36歳。
肝臓癌だった。
彼は博士課程の学生だった。
一度就職してから色々あったらしく、仕事を辞め、大学に戻ってきた。
勉強が好きなタイプではなかったけれど、
学会発表の資料を作る能力はピカイチだった。
人と関わることが上手で、
色んな人とすぐに親しくなれるやつ。
いつもでっかいことばっかり言って、
嘘つきで、でもその嘘はふとしたときにバレて、
嘘が完結しないちょっと間が抜けてるやつ。
“酒はいくらでも飲めるんです”といって
ビールの500缶を半分空けるか空けないかで
ソファで寝てしまうやつ。
うちに来るときはいつもなにか手土産を持ってくるから、
“いいよ、こんなにいつもいつも持ってきてくれなくても”というと
“礼儀ですから”と気を遣うやつ。
はるを可愛がってくれて、“はーちゃん、はーちゃん”と
撫でまわしながらはるに舐めまくられても喜んでる気のいいやつ。
ある出来事で、博士を取ることなく大学を辞めてしまい、
あきちゃんとも疎遠になってしまった。
でも、風の噂で頑張っていることは何となく知っていた。
病気のことを知ったのはほんの1〜2ヶ月前。
でも、それも大げさに言っているのだと思っていた。
きっといつもの嘘で、
そのうち「やっぱり嘘だったね」
と笑えるのだと思っていた。
なんだよ。
知らないうちに逝っちゃって。
なんだよ。
会わないうちに逝っちゃって。
ビッグになってフェラーリに乗って大学に乗り付けるんじゃなかったの?
ディズニーランド貸し切りにして結婚式するから来てくれって言ったじゃん!
あきちゃんは、
いつかあなたがまた手土産持ってふとやってきて
“あんなこともありましたね”
って笑ってお酒飲めると思ってたんだよ。
あなたが大学を辞める事になったとき、
私、言ったよね!
“なにやってんのよっ!”って。
ほんと、なにやってんのよ!
なんで死んじゃうのよ!
悔しくて、情けなくて、残念で、悲しいよ。
冥福なんて祈らない。
あっちの世界でゆっくり過ごしてなんていわない。
さっさと戻ってきて、約束守りなさいよ。
なにやってんのよ。
なにやってんのよ。
悔しいよ。
ほんと、悔しい。
なんで知らせてくれなかったんだよ。
なんで連絡くれなかったんだよ。
会いたかったよ。
私よりもっとずっと悔しい気持ちでいるのはあきちゃんだよ。
なんか一言言いに来なさいよ。
一言でいいから彼と話してあげてよ。
頼むよ。
約束、忘れないから。
ぜったい、忘れないから。
忘れないから。